top of page
Recent Posts

東チベット旅行記②タナ寺温泉

  • soi55msg
  • 5月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月16日

【前回までの話】


 宿でWi-Fiを繋いで、ナンチェン郊外の観光地を調べてみると、一番人気のスポットは、温泉がすぐ横にあるタナ寺という寺院だった。タナ寺は、「ゲセル王物語」というチベットの英雄伝説の王が、ご本尊の一人として祀られているらしい。しかし、距離が遠く、プライベートタクシーだと、かなり高額になってしまう。

 宿の一階にある本屋で、お店の手伝いをしていた若いお坊さんと会話をしている時に、タナ寺の話をしたら、偶然、彼は次の日その方面に向かうという。そこで、車に乗せて行ってもらうことにした。


 車はナンチェンを離れ、メコン川上流の谷間を進んでいく。窓から見える風景は、だんだんゴツゴツとした風景になっていく。途中、元の時代に、パクパが建てたという寺院に寄って、そこでお坊さんは、違う方向に行くからと、次の車を探して引き継いでくれた。ヒッチハイクというか、ベルトコンベアで運ばれていく感覚だ。

 次の車は、三人の子供を乗せた家族。途中、日が暮れて、「救災」と大きく書かれた謎のテントで寝ることになった。どうやら、この家族が経営する道の宿的なテントだった。



 次の日、さらに違う車に引き継がれ、走ること丸一日、夕方になってようやく、目的地に到着した。川の河原の真ん中に、白いカルスト的な一枚岩がどーんとあって、その岩の周囲に一人か二人がやっと入れるくらいの穴が風呂釜風に空いていて、週末ということもあり、けっこうな人が集まっていた。


 温泉の横にはBBQスペースがあり、奥のプレハブ的な建物に宿泊できるという。とりあえず、チェックインして、夕飯を注文して、バター茶をのながら、宿のおじさんと会話をした。こんな辺境まで来る日本人はいないだろうと思っていたのだが、半年前にも、日本人女性が一人来たとのことだった。



 タナ寺とは「馬の耳」を意味する名前で、チベット仏教のカギュー派のうち、イェルパという高僧が開いたイェルパ・カギュー派という、かなりマイナーな教派に属する寺院だ。イェルパ・カギュー派の主要な四つの寺院は、この一帯にあって、そのうちのゴンロン寺という寺院の名前に記憶があったので、宿の主人に、どのように行ったらいいのかを尋ねると、その寺院は50年前くらいに廃寺になった。行きたいなら、明日ゴンロンに行く車があるから、乗せていってもらえという。


 夕飯を食べた後で、僕は温泉に入りに行った。温泉が湧き出る岩の周りには、まだたくさんの人がいた。壺湯に入ると、お湯は熱々で、硫黄の匂い、とろみがあって、予想以上に温泉だった。夜空を見上げると、満天の星空で、チベット高原の奥深くまできて、こうしてお湯に浸かっていることが不思議に思えた


【続く】


 
 
 

Comments


bottom of page