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東チベット旅行記①西寧→ジェクンド→ナンチェン

  • soi55msg
  • 5月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月16日



 その年の6月、僕は中国青海省を訪れた。当初は、西寧からそう遠くない、ゴロクと呼ばれるバヤンカラ山脈山麓の地域を訪れる予定だった。


 しかし、バスを乗り間違えて、終点で降ろされた場所は、黄河の源流に近い、標高の高い町で、初夏であるにもかかわらず、吹雪いていた。西寧に引き返して、目的地に向かうとしても、二日三日無駄な時間を過ごしたことになる。そう算段した僕は、そのまま、チベット高原の奥へ進むことにした。とりあえず高速の入り口で、バスをヒッチである。


 吹雪の中、出稼ぎのために奥地へ向かうチベタンたちに混ざってバスを捕らえ、ジェクンドという都市を目指した。ジェクンドはこのあたりでは比較的大きな都市で、10年ほど前の震災で壊滅した町の再建が進められていた。どこか直線的で人工的な街並みだった。博物館を見学した後、さらに奥地のナンチェンという都市に進んでみることにした。昔お世話になったお坊さんがナンチェン出身で、いつか行ってみてと言われたのを思い出した。



 ナンチェンでは、外国人が宿泊可能な宿を探すことから始まった。中国の辺境では、外国人が宿泊できる宿というのが限られていて、何の情報をもたない僕は一軒一軒たずねて、見つけるまでかなり時間がかかった。野宿も覚悟したくらいだ。なんとか、外国人が宿泊できるビジネスホテル風の宿を見つけて、次の日から、ナンチェンの中心部や周辺の寺院を観光してまわった。


 ナンチェンは、その昔、ナンチェン王家と呼ばれる、西夏に由来する地方豪族が治めていた小さな王国で、ナンチェン王寺というのが郊外にあり、地図を見た感じ、車で30分くらいのところにある集落から歩いて行けそうな感じだった。


 とりあえず、その集落へ行き、村人にナンチェン王寺の行き方を尋ねると、丘の方向を指差して、時間はかかるけど、歩いていけなくもない距離、でも、野犬がたくさんいるから噛まれて死ぬよ、とのこと。


 チベットで一番危険なのは、野犬なのだ。町の中心部でさえ、野犬に囲まれて動けなくなることはよくあって、今朝も犬に囲まれていたところを、通りすがりのトラクターに救われたばかりだった。僕は村人のアドバイスを素直に受け入れ、ヒッチで向かうことにした。乗せてくれたのは、ヤンチャそうなチベット人のトラックドライバーで、結局2時間くらいかかった。歩いて行ってたら、死んでたぜ。



 このあたりの風景は、どことなくブータンに似ている。ブータンはチベット文化圏の中では、緑が多い方で、寺院もコンパクトなものが多い。そして、ナンチェン王寺に掲げられていた旗は龍の柄で、ブータンの国旗に酷似している。


 というのも、ナンチェン王寺の教派は、ブータンの国教であるチベット仏教ドゥク派と同じで、ドゥクは龍のこと。


 そんな感じで、ナンチェン王寺の化身ラマに謁見して、カタという白いスカーフを贈答する儀式をやって、帰って来た。帰りもヒッチで、チベット人だけど、共産党員で無神論者という中年男性の車に乗せてもらった。三菱ならぬ、五菱の車だった。


「無神論者だけど、この年になると、お寺にお布施をしたくなるものなのだよ」とか言って、途中、寺院に立ち寄って若い化身ラマと謁見して、お金の入っていそうな封筒を渡していた。


【続く】


 
 
 

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